パリ、ジュテーム

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パリ、ジュテーム/PARIS JE T'AIME(2006、フランス=リヒテンシュタイン=スイス、120分)


パリ20区のうち18区をそれぞれ18人の世界の有名監督たちが担当して撮ったオムニバス映画。

タイトル通り、パリを舞台に恋や愛に関するテーマで作られている。



モンマルトル/MONTMARTRE(6分5秒)
○監督:ブリュノ・ポダリデス
○出演:ブリュノ・ポダリデス、フロランス・ミュレール

18区。

これぞ正しい恋愛映画のオープニングといった感じで、このあとも物語が続くんだと想像させる。

このオムニバス映画の幕開けとしてもふさわしいとてもスマートな一本。

別タイトルをつけるなら「恋人たちの予感」なんていう・・・ってすでにあるか・・・



セーヌ河岸/QUAIS DE SEINE(6分11秒)
○監督:グリンダ・チャーダ
○出演:シリル・デクール、レイラ・ベクティ

5区。

先の"モンマルトル"がこれから始まる恋の可能性と余韻を感じさせる作品なら、これは一瞬の中にのみ成立する刹那的な恋を切り取っている。

そして、それでもいいんだ。




マレ地区/LE MARAIS(6分)
○監督:ガス・ヴァン・サント
○出演:ギャスパー・ウリエル、イライアス・マッコネル、マリアンヌ・フェイスフル

4区。

恋、愛をテーマにしたオムニバスでちゃんとこういう話が一編でもあってよかったなと思う。

緊張感ある映像とラストの疾走シーンがとてもいい。

かなりセンスのいい短編に仕上がっています。




チュイルリー/TUILERIES(6分)
○監督:ジョエル&イーサン・コーエン
○出演:スティーブ・ブシェーミ

1区。

とある観光客にふりかかる災難を描いた作品でこの18本中ではだいぶ浮いているという印象。

これはパリに過剰に恋心を持つものへの忠告か。




16区から遠く離れて/LOIN DU 16e(5分8秒)
○監督:ウォルター・サレス、ダニエラ・トマス
○出演:カタリーナ・サンディノ・モレノ

16区。

これは比較的短い作品。

短いだけにいろいろ考えさせられる。

なぜ短いのか、なぜほとんど盛り上がりもドラマもなく終わるのか。

それは描くべきドラマがないということを通して主人公の女性の人生について深く考えさせる狙いがあるからだ。

こういうアイデアは短編だからこそできる。




ショワジー門/PORTE DE CHOISY(5分35秒)
○監督:クリストファー・ドイル
○出演:バーベット・シュローダー

13区。

うーむ。謎すぎる。

なんとも捉えようのない作品として強烈な印象を残してくれた。

パリのアジアンコミュニティーを撮っている唯一の作品。




バスティーユ/BASTILLE(5分37秒)
○監督:イサベル・コイシェ
○出演:セルジオ・カステリット、ミランダ・リチャードソン

12区。

正直言ってオチが弱い。

ただ長編を短くコンパクトにダイジェスト的にまとめただけという感じがして、色々惜しい。

丁寧に一つ一つ説明しすぎたのかな。




ヴィクトワール広場/PLACE DES VICTOIRES(5分41秒)
○監督:諏訪敦彦
○出演:ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、イポリット・ジラルド

2区。

短編映画は俳句に似ている。

限られた文字数、限られた時間の中でそれ以上のことを言えるかどうかが鍵だ。

この作品は一つ一つの映像で色々なイメージ、想像を掻き立たせてくれる。

いいです。




エッフェル塔/TOUR EIFFEL(5分51秒)
○監督:シルヴァン・ショメ
○出演:ポール・パトナー、ヨランド・モロー

7区。

パントマイムで綴る愛の物語。

言葉はなくても愛は交わせる。

監督がシルヴァン・ショメということで、実写じゃなくアニメで作ってくれてもこのオムニバスのいいアクセントになってよかったんじゃないかな。

それでも個性的な作風はよく出ている。




モンソー公園/PARC MONCEAU(5分11秒)
○監督:アルフォンソ・キュアロン
○出演:ニック・ノルティ、リュディヴィーヌ・サニエ

17区。

これはやられた。

ワンショット、ノーカットで見せるのも短編の醍醐味。

オチが最高で、まるで落語のよう。そうか、こういう撮り方もあるんだな。




デ・ザンファン・ルージュ地区/QUARTIER DES ENFANTS ROUGES(6分54秒)
○監督:オリヴィエ・アサヤス
○出演:マギー・ギレンホール

3区。

オープニングの"モンマルトル"とは逆の、恋が始まらなかったケースを描いている。

パリの夜の、すれ違い。




お祭り広場/PLACE DES FETES(6分)
○監督:オリヴァー・シュミッツ
○出演:セイドゥ・ボロ、アイサ・マイガ

19区。

一つ一つの映像の語る情報が多く濃密。

それで詰め込みすぎてない、とてもよくできた作品。

このオリヴァー・シュミッツ監督のことは初めて知ったが、短編映画の作り方をよくわかっているなと思った。




ピガール/PIGALLE(5分13秒)
○監督:リチャード・ラグラヴェネーズ
○出演:ボブ・ホスキンス、ファニー・アルダン

9区。

出だしのアイデアはいいなと思ったんだけど、後半やや失速したかな。

パリの街はどこもステージだ、というような作品。




マドレーヌ界隈/QUARTIER DE LA MADELEINE(6分12秒)
○監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
○出演:イライジャ・ウッド、オルガ・キュリレンコ

8区。

とにかく映像・ヴィジュアルのセンスのみで駆け抜ける一本。

短編ならそれでもありだなと思う。

ありそうでなかったホラーラブストーリー?

あの真っ赤な鮮血がこの映画全体のよいスパイスになっている。




ペール・ラシェーズ墓地/PERE-LACHAISE(5分43秒)
○監督:ウェス・クレイヴン
○出演:ルーファス・シーウェル、エミリー・モーティマー

20区。

テンポのいい台詞劇。

でもこれもちょっとオチが弱いというかオチを生かしきれてないような。。。

オスカー・ワイルドの墓に口付けする女とつまづいて頭をぶつける男のお話。




フォブール・サン・ドニ/FAUBOURG SAINT-DENIS(7分13秒)
○監督:トム・ティクヴァ
○出演:メルキオール・ベスロン、ナタリー・ポートマン

10区。

この作品はすごい。

一つの長編映画を早回しにしてそのまま短編の枠の中に強引にねじこんでいる。

まずこの発想がぶっ飛んでいる。

たとえるなら長編小説の文章をひらがなの形に並べて、またそれを17つの文字に並べなおして俳句を書いたようなものだ。

撮影時間も費用も18本中一番かかっているだろう。

ワンショットの"モンソー公園"とは真逆の方法論ですばらしい短編を作ってしまったトム・ティクヴァに拍手。

それでいてこのシナリオもまた見事なのだからお手上げだ。




カルチェラタン/QUARTIER LATIN(7分5秒)
○監督:フレデリック・オービュルタン、ジェラール・ドパルデュー
○出演:ベン・ギャザラ、ジーナ・ローランズ

6区。

非常に大人で、スウィートな雰囲気の離婚劇。

"モンマルトル"がオープニング的作品なら、これはエンディング的作品。




14区/14e ARRONDISSEMENT(6分53秒)
○監督:アレクサンダー・ペイン
○出演:マーゴ・マーティンデイル

14区。

アレクサンダー・ペインのカラーがハッキリと出ており、今まであったいわゆるフランス映画的空気はすべて掻き消されている。

パリが舞台なのにどうしてフランス人監督だけで撮らずに世界各国から監督を集めたんだろうと思っていたところへ、この異邦人から見たパリを最後に映し出すことでこの映画のコンセプトが理解できた。

そういう意味でとても意義深い重要な一篇。




最後にエンディングが流れるがここは好きではない。

それぞれの映画の中で完結してほしかったので。

この中で個人的なベストを選ぶとしたらトム・ティクヴァの"フォブール・サン・ドニ"かな。

次点にガス・ヴァン・サントの"マレ地区"、アルフォンソ・キュアロンの"モンソー公園"、オリヴァー・シュミッツの"お祭り広場"、アレクサンダー・ペインの"14区"。

オムニバス映画好きなので楽しめたが、そうでない人にとってはちょっと長い、多いかな。

確かに18本はちょっと多すぎるよなあ。。

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