セプテンバー11

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セプテンバー11/11'09"01 SEPTEMBER 11(2002、フランス、134分)


2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを受けてその悲惨かつ衝撃的な事件を忘れないために世界11人の名匠たちが集結し、11分09秒01フレームの長さで9・11テロや戦争と平和についての短編を作ったオムニバス映画。


イラン/IRAN
●編集:モフセン・マフマルバフ
●脚本・監督:サミラ・マフマルバフ
●出演:マリヤム・カリミ
時:2001.9.11直後、場所:イラン


9・11直後、アフガン難民の子供たちに若い女の先生が授業をしている。

「世界的な大事件が起きました。何が起きたか知っていますか」と子供たちに尋ねる。

子供たちは口々に近所で起きた井戸掘り中の転落事故について喋りだす。死亡者も出たと言う。

先生はそうではなく、ニューヨークの大きなビルに飛行機が激突したことを説明しみんなに一分間の黙祷をさせる。

しかし子供たちはうるさいままだ。

「人は世界中で毎日死につづけている」

と言っているように聞こえた。

最後に先生が子供たちを煙の出る大きな煙突の元に連れて行くラストショットが秀逸。



フランス/FRANCE
●脚本:クロード・ルルーシュ、ピエール・ユイッテルヘーヴェン
●監督:クロード・ルルーシュ
●出演:エマニュエル・ラボリ、ジェローム・オリー
時:2001.9.11、場所:ニューヨーク マンハッタン


聾者のツアーガイドの男(健常者)と聾唖の写真家の女。

女はフランス人で、二人はニューヨークで出会った。

二人は手話で会話する。

映画に音は無い。

二人はもう破局寸前である。

男は部屋を出た。

「恋の終わりは世界の終わり」

と手紙に書く女。

音の無い世界。

コップが揺れる。

犬が吠える。

電気が消える。

「私から別れを言うわ。あなたに捨てられる前に。奇跡でも起きない限り・・・」

そしてその時、男が砂埃にまみれて帰ってきた。



エジプト/EGYPT
●脚本・監督:ユーセフ・シャヒーン
●出演:ヌール・エルシェリフ
時:2001.9.12、場所:エジプト カイロ


シャヒーン監督の次回作の記者会見場。

あんな大事件の後なので会見は中止にしたいと申し出るが、記者たちはやめようとしない。

その後海岸で1983年ベイルート自爆テロの犠牲となった米兵の幽霊と出会う。

ややファンタジー色が強いがアメリカへの直接的なコミットを図っている作品。



ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/BOSNIA HERZEGOVINA
●脚本・監督:ダニス・タノヴィッチ
●出演:ジャナ・ピーニョ、アレクサンドラ・シェクサン
時:2001.9.11、場所:ボスニア・ヘルツェゴヴィナ スレブレニツァ


11作品中で最も静かで繊細な作品。

セルマという少女とネディムという車椅子の少年の日常風景を2001年9月11日の一日として切り取っている。

彼らには彼らの現実があり、彼らには彼らの闘いがあった。

平和を祈るということは平和を勝ち取るための静かな闘争なのだ。

このオムニバスから外し、単品で見ても十分すぐれた短篇として成立する。



ブルキナファソ/BURKINA-FASO
●脚本・監督:イドリッサ・ウエドラオゴ
●出演:リオネル・ジスリエル・ギレ、レネ・エメ・バシンガ
時:2001.9.24から数日間、場所:ブルキナファソ


9・11から数日後、アダマ少年は街角でビンラディンを発見し仲間4人に報告する。

懸賞金は2500万ドルだ。2500万ドルって何フラン?えーととにかくたくさん。

これでお母さんの薬代も、自身の学費も稼げる。

病気の人や恵まれない子供たちも救える。

さあ!ビンラディンを捕まえるぞ!

という子供を主役にしたとてもほほえましいエピソード。



イギリス/UNITED KINGDOM
●脚本:ポール・ラヴァティ、ケン・ローチ、ウラジミール・ベガ
●監督:ケン・ローチ
●音楽・出演:ウラジミール・ベガ
時:2002.9.11直前、場所:ロンドン


9・11から1年後、「レディバード・レディバード」でおなじみのロンドン在住のチリ人アーティスト、ウラジミール・ベガを語り部として映画は始まる。

ニューヨークテロの犠牲者の遺族へ宛てた手紙という形式で、70年代のチリのアジェンデ大統領当選からアメリカ・CIAの軍事介入、クーデター、1973年9月11日の大統領殺害、その後の残虐な左翼狩りまでを映像で振りかえるという内容。

チリからのアメリカへの痛烈な回答書簡。



メキシコ/MEXICO
●脚本・編集・監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
時:-、場所:-


テロ発生時のニュース映像と音声をつなぎ合わせたコラージュ的作品。

日本語での報道の断片も聞こえる。

世界中へ瞬く間に同時に発信された報道の中央部としてのニューヨークの当時の状況をよみがえらせている。

11分のうち半分以上は画面は黒く覆われている。

次第に白化していくなか、最後にアラビア文字と英語のメッセージが浮き上がる。

Does God's light guide us or blind us?

映画のほぼ中頃に登場するこのメッセージの印象はとても鮮烈で強い。



イスラエル/ISRAEL
●脚本・監督:アモス・ギタイ
●出演:ケレン・モル
時:2001.9.11、場所:イスラエル テルアヴィヴ エルサレム通り


テルアヴィヴで起きた自爆テロの混乱の様子がノーカットで映し出される。

映画であることを忘れてしまうほどの緊迫感とリアリティがある。

軍、警察、救急隊、野次馬、カメラマン、たまたま居合わせたTVの情報番組のクルーがごった返す中レポーターの耳にニューヨークのツインタワーに飛行機が墜落したと情報が入る。

エルサレム通りはまだ騒然としている。



インド/INDIA
●監督:ミラ・ナイール
●出演:カプリ・バワ、タンヴィ・アズミ
時:2001.9.17/9.11から半年後、場所:ニューヨーク


ニューヨーク在住のパキスタン系アメリカ人の青年サルマン・ハムダニ行方不明の貼り紙。

イスラム教徒の彼はテロ実行犯とみなされFBIから指名手配された。

無実を信じるのは両親のみ。

テレビでは隣人がサルマンの人物像についてインタビューに答えている。

祈り続ける母親。

半年後、崩壊したビルの下でサルマンの遺体が見つかった。

人命救助に当たっていたところビルの崩落で命を落としたのだと言う。

今度は彼は英雄として扱われる。



アメリカ/UNITED STATES OF AMERICA
●脚本・監督:ショーン・ペン
●出演:アーネスト・ボーグナイン
時:2001.9.11までの数日間、場所:ニューヨーク マンハッタン


妻を失ってからもまだその死を受け入れることのできない老人の日常をつづっていく。

家に一人で居ても常に誰かに話しかけ、寝るときは亡き妻の洋服をクローゼットから選び出してベッドの隣に置く。

そんな目覚まし時計が鳴らずに寝坊したある日、万年日陰の窓に突如大きな光が射し込み妻が育てていた枯れていた植木鉢の花が生き返った。

喜ぶ老人だったが、妻が生き返ることはないと気づき嗚咽するのだった。

数分後、また隣の陰が崩れ落ち、光が大きくなった。



日本/JAPAN
●脚本:天願大介
●監督:今村昌平
●出演:田口トモロヲ、麻生久美子、柄本明、倍賞美津子、北村和夫、市原悦子、緒形拳、役所広司
時:1945年太平洋戦争末期、場所:日本


戦争から無事生還したものの精神を病み自らを蛇にしてしまった兵隊。

家族や村人は困惑するが立派な帰還兵を無下に扱うこともできない。

しかし家畜を襲ったりネズミを丸呑みした彼を見て家族はついに彼を追い出した。

彼を蛇に変えてしまうほどの戦争とは一体何なのか。

この一篇のみ時代が1945年で直接に9・11テロを描いていないため圧倒的かつ異色な存在感を放つ。

ほぼ反則技に近い気もする。

「聖戦ナンカアリハシナイ」

これは攻撃した側、された側双方に向けられたメッセージだ。



最後に個人的にベスト3を選ぶとすると、イラン編、フランス編、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ編かな。

単独で短編として見て好きなものを選んだ。

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